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ドライクリーニングの溶剤とは?種類によって衣類の仕上がりが違う!

クリーニング店のドライクリーニングは、水ではなく溶剤という専用洗剤で汚れを落とします。溶剤はいくつか種類があり、他の洗剤と違って取り扱いが難しく、間違った方法で使ってしまうと衣類にダメージを与えてしまいます。溶剤に対する知識と管理体制がしっかりしているクリーニング店こそ、優良店といっても過言ではありません。
そこで今回は、ドライクリーニングの溶剤とはどんなものか、種類別の特徴や管理体制について詳しく解説します。

ドライクリーニングの溶剤とは?種類によって衣類の仕上がりが違う!

ドライクリーニングの溶剤って何?

家庭用洗濯機にも「ドライコース」はありますが、クリーニング店のドライクリーニングは水洗いしません。代わりに「有機溶剤」と呼ばれる液体を使って、衣類に付着した汚れを落としていきます。有機溶剤の原料はセキユや塩素など、液体に溶ける物質(溶質)を溶かす成分を含んだ液体を使います。

身近な中では、マニキュアを落とす除光液が、有機溶剤と同じ仕組みです。マニキュアは水ではきれいに落ちませんが、除光液を使うことできれいになりませんか?

有機溶剤や除光液など水では落ちない汚れは、油との相性がいいため、ドライクリーニングでは水洗いではなく有機溶剤(油)を使うのです。

ドライクリーニングで溶剤を使う理由

水洗いではなく、溶剤を使ってドライクリーニングすることで、洗濯でよくある悩みを解消できます。

・セーターなどが縮まない
・コートや制服が型崩れしない
・色柄ものの衣類が色落ちしない
・色味や風合いが変化しない
・生地の毛羽立ちがない

ウール100%のセーターやニット類、シルクやレーヨン、毛皮、シワ(ちりめん)加工した衣類などを水洗いすると、生地がダメージを受けます。溶剤を使うドライクリーニングは、水に弱い油溶性の汚れを落とすだけではなく、生地ダメージのない方法で仕上げるため、衣類を長持ちさせる働きもあるのです。

ドライクリーニングの溶剤の種類と特徴

ドライクリーニングの溶剤は、大きく分けると「パークエロエチレン」「石油系溶剤」「フッ素系溶剤」の3種類あります。
それぞれ特徴が違うので、チェックしておきましょう。

パークロロエチレン(テトラクロロエチレン)

他の溶剤に比べて汚れ落ちの効果が高く、クリーニングには欠かせない「もみ」「叩き」といった動きに強く、洗浄や乾燥時間が短いのが特徴です。しかし、パークロロエチレン(テトラクロロエチレン)は、ドライクリーニングの主溶剤として使われていましたが、米国環境保護庁が有害指定物質の指定により、現在はほとんど使われていません。

石油系溶剤

クリーニング店の多くで使われているのが、石油系溶剤です。石油系溶剤は、油脂溶解力と比重が3種類の中で一番低いため、デリケートな素材の衣類をクリーニングするときに利用します。
また、洗浄時間や乾燥温度が低いのも特徴のひとつです。溶剤の中では「優しい溶剤」として活用され、洗濯表示で「ドライセキユ系」のマークがある衣類のクリーニングに使われています。

フッ素系溶剤

フッ素系溶剤は、3種類の中で2番目に溶解力が小さく、沸点が一番低いため、洗浄と乾燥時間が短いのが特徴的です。溶解力が小さいので、口紅やインクなど油溶性の強い汚れをきれいに落とす力は弱いです。
また、フッ素系溶剤は種類によってオゾン層破壊物質に指定されており、製造や使用できません。フッ素系溶剤の特徴から、ボタンや樹脂など装飾のある衣類はダメージを受けやすいので、使用しないクリーニング店が多いです。

ドライクリーニングの溶剤は再利用が必要

ドライクリーニングの溶剤の多くは、原料が石油です。油溶性の汚れにはメリットの高い溶剤ですが、環境にとってはあまり良い成分ではないのです。
そのため、日本の法律(水質汚濁防止法)によって、溶剤は下水管に流すことができません。クリーニングで使い終わった溶剤は、そのまま排水できないため、基本的に何度かリサイクルして使いまわし、古い溶剤は専用業者が回収します。

ドライクリーニングの溶剤は汚い?

「溶剤はリサイクルしてクリーニング」と聞けば、汚いイメージを持つ人も多いでしょう。リサイクルといっても、溶剤をそのまま次のクリーニングで使うのではなく、以下の方法できれいに整えてから使います。

・専用カートリッジで汚れを除去
・吸着材を使って汚れを除去
・蒸留装置で汚れと溶剤を分離して使用

溶剤のリサクル方法は、クリーニング店によって違いますが、いずれも古い溶剤をきれいな状態へ、ろ過して使います。溶剤管理をしっかりしているクリーニング店なら、衣類が汚れる心配はないでしょう。

ドライクリーニングの溶剤管理が悪いとどうなる?

ドライクリーニングに欠かせない溶剤ですが、クリーニング店によって管理体制はバラバラなのが現状です。

溶剤は、一般的な洗濯洗剤と違って再利用するため、きれいな状態にろ過するための管理時間とコストがかかります。そのため、卒業や入学などで、ドライクリーニングが増える繁忙期や設備の整っていないお店では、溶剤の管理が不十分なまま再利用するケースもあります。管理体制の悪い溶剤を使ってクリーニングすると、衣類にから異臭がしたり黒ずみが発生したりと、仕上がりが悪くなります。管理の悪い溶剤が原因の衣類トラブルは、きれいな溶剤で再度クリーニングしなくては汚れが落ちません。

ドライクリーニングしたけど、戻ってきた衣類から悪臭や重みを感じたときは、溶剤の管理体制が悪い可能性が高いでしょう。

まとめ|ドライクリーニングの溶剤の管理体制で仕上がりが変わる!

ドライクリーニングの溶剤は、種類によって特徴が違うため、衣類の状態に合わせて選ぶ必要があります。また、溶剤は法律によって排水を禁止しており、何度かリサイクルして使います。

溶剤の管理体制が悪いと、生地ダメージや仕上がりにさまざまなトラブルを引き起こすので、信頼できるクリーニング店を選びましょう。

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